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ー作曲家を目指した時期があったとのことですが。
小山●東京に出てきた頃は、漫画家になるとは考えもしなかったですね。「少年サンデー」「少年マガジン」の創刊が中学生の頃だったけど、東京に出てくるまではその存在も知らなかった。マンガというのは小学校の頃に近所の友だちに『鉄人28号』を貸してもらって読んだくらいで。中学、高校とまったくないです。
ーそうだったんですか。
小山●もしマンガを読んでても、漫画家になるなんて当時は考えもしなかった。そういう時代でしたから(笑)。ただ絵を描くこと、模写
力には自信がありました。 ーマンガ家としてのストーリー作りは?
小山●いやそれはまったく……。
ーそれがどこで?
小山●作曲家をめざして上京したんだけど、まず何かバイトをしなきゃならない。絵が描ける、というのでアニメの会社でバイトをしていたんだけど、たまたまそこの先輩から、さいとう・たかを先生のところでアシスタントを募集しているのを聞いて。で、さいとうプロに入ってからこの世界が好きになった。オレに向いてると。それが漫画家になったきっかけですね。
ーそれから『おれは直角』でデビューされるまでは短期間でしたか。
小山●いや6年もかかりました。さいとうプロで3年、スタジオシップで2年、それから1年は浪人して貧乏生活でした。
ーさて、『あずみ』ですが……。相変わらずばっさばっさと斬っていますね。
小山●ええ。それをやりたくて始めたようなもんですから(笑)。
ーあずみという変わった名前の由来は?
小山●最初はひどい名前、モズ、カラス、スズメとか、虫とか鳥とかを使おうかと考えていました。とにかく厳しい時代背景なんで。でも、いまいちぴったりなのがなくて、土地の名前にしようかということになって……全部土地の名前です。あずみは安曇野から。
ー最初の頃に出てくる、うきは、なち、ひゅうがも?
小山●ええ土地の名前です。人名の事典の中に土地に由来する名前があるんですよ。
ー久々に女の子の主人公ですが。
小山●ずっと男を描いてきて、僕の中での理想像というのがあるんです。それが坂本竜馬で、これまでも『おれは直角』でもどこか竜馬のような要素があったわけで。で、『お〜い!竜馬』で竜馬を描いちゃったでしょ。そうすると、男のいちばん好きなのは描いちゃったから、次には何をやるにしても、女性でいこうと。
ー早い話、男に飽きた?
小山●ははは。そうではなくて。男を描くとダブってしまいますからね。どこか直角っぽいとか、元気っぽいとか、竜馬っぽいとかになっちゃうと思ったんですね。
ーそして年齢は明らかに少女ですね。
小山●よく人から、小山ゆうさんは少年とか子どもがいいとか言われるんだけれども……。描きやすいというのもあるんですよ、十代の方が。
ーあずみのモデルは、どこかにあるのですか。
小山●それはないですね。とにかくチャンバラを描きたかったというのがまず最初にありましたね。
ー女の子を描き、内容はチャンバラでいこうと決められたと。
小山●漫画家になる時に、自分はこれを描きたい、というのがあるんですね。笑ってもらいたい、泣いてもらいたい、感動させたいとかいろいろある。僕の場合は、何よりも闘う武士を描きたいというのが最初にあるわけで、僕の作品は全て闘っているんですね。その中でいちばんイメージに合うのはチャンバラかな。東映時代劇を見て育った世代なんで、いちばん感性に合ったというのはあるんです。いや、正直言うと、本当は現代劇をやりたかったんですよ。女の子で、現代劇でアクション、死闘をやりたい。いい企画はないかと編集担当といろいろ相談して悩んだのだけど、結局、時代劇にしました。
ーちょっと太めの太ももというのは意識的ですか。
小山●少女マンガに出てくる女性というのは、モデルのような、モデルというよりリカちゃんのような足ですね。そこをリアリズムで考えると、いわゆる瞬発力の筋肉はどういう筋肉かと考えたわけです。太いというのは、普通
の少女マンガと比べた場合の話だと思うんです。リアリズムで考えてどういう筋肉になるのか。瞬発力の筋肉を見るとき、やはりテニス選手だとか、体操だとか、マラソン選手とか。ようするにモデル足とは違うわけですよ。
ーたとえば往年のテニスの女王クリス・エバートの足!
小山●そういう瞬発力の足はどういう足か。女の子ならもっと細い足のほうがいいとか言われるだろうけど。くだらないこだわりなんですよね。こんな足でそんな筋力があるはずがない、というような足は描きたくない。女性は細くて長い足がいいのかもしれませんが、僕はそんな足の女性でアクションを描きたくないですね。
ーこの作品を描くために特に参考にした小説・映画などはありますか?
小山●とくにこれがというのはなくて、これまで僕が長い間見てきたものすべてだと思うんです。司馬遼太郎さんとか山本周五郎さんとか、たくさん読んでいたんだけど、編集者からこの時代は隆慶一郎さんの小説といっしょだからと勧められて、隆慶一郎さんの小説をいっぱい読みました。
ー物語の最初に子どもたちを全国から集めてきたというのは……。
小山●たとえば運動神経抜群とか天才的な人は、そういう天賦の才能を見つける能力があるというのはどうも本当らしくて……。巨人の長島監督が、5歳の子供でもバットを振らせるとわかるとかいうことを聞いて。才能がある人はきれいに手首を回すそうなんですよ。だから、剣客は剣客になる資質を見抜く才能があるという前提に立って、この爺が見抜いたんでしょうね。この時代(江戸時代初期)は、みなし児とかいっぱいいただろうし、まあ細かいところは描かないで読者の想像に任せて。とにかく才能ありと見破る能力があった、と。
ー女性が主役ですから、舞うような、幻惑するような所作があるかと思ったのですが。
小山●僕はリアリズムの殺陣が好きなんです。理屈、理論に合っているものが。幻覚、催眠術というのは現実とはかけ離れているので、あずみの特技はスピードになりますね。
ー描き込まれている背景がとても丁寧で、小道具もきれいに描き込んであるのは映画のようですね。
小山●スタッフがいっしょうけんめいやってくれています。僕の親は映画が好きで、連れていってもらったのがやはり東映のチャンバラ映画全盛の頃で。その映画の背景も相当好きだったんです。
ー通行人の着物の柄や桶までも細かい。
小山●それはもう師匠さいとう・たかを先生の影響です。
ーこの過酷な世界で生きるあずみに、恋人のような人ができたかなと思うと消えていく。あずみに恋人はできるのでしょうか。
小山●それは僕にもわかっていないんですよ(笑)。
ーこの先『あずみ』がどう流れていくかも?
小山●『がんばれ元気』のときは、だいたい最終回まで大きなイメージを決めてやったんです。その次の作品でもだいたい決めてやっています。『あずみ』が初めてですね、決めてないというか、考えてないのは。
ーするとこの先どうなるとか、大きなブロックごとのお話は?
小山●いや。とにかく強いヒロインを描きたいというだけです。僕にもこの先どうなるかわからないしね。いいかげん斬るシーンを描き飽きたというくらい描いたら終わりますよ(笑)。『お〜い!竜馬』の頃から斬るシーンを描きたかったんだけど、竜馬は人を斬ったことがないから、描けなかったんですよ。
ーあずみの斬りまくり、これからも楽しみにしています。
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